USB電源とバッテリーの切り替え回路を実際に作って確認してみる話

バッテリーを使用する回路では、使用する電圧源のスムーズな切り替えが必要です。自分の頭で考えられる回路でも十分実装可能ですが、求める電圧特性などでさらに良い選択肢というのは世の中にはあふれているでしょう。

今回、私が想定する回路に求めるものは、バッテリーとUSB電源を瞬断することなく切り替えて、バッテリーは効率よく動作させるために、バッテリー動作の際は電圧降下が少ないこと、逆にUSB電源に接続している際はそこまで効率を気にしないといったことです。また、基板の実装スペースやコストの都合上シンプルで安価なものが望ましいです。

コストをかければとても良い回路特性を得ることができるのは当たり前なので、シンプルで安価なこととバッテリー利用時の電圧降下を低くすることのバランスが大事になってきます。

その条件を満たす回路を選定し、実際に作ってみるまでが今回の逃れになります。ネットの記事の多くは理論的な構成のみで実際に回路作製まで行っていないことが多いので、実際に配線して動くことを確認します。電圧降下の程度も載せておきますが、オシロスコープ等の良い測定機器は持ち合わせていないので、参考程度にお願いします。

目次

自分で思いつく回路とその問題点

簡単に思いつく回路を思い浮かべてみます。逆流防止に使う素子と言えばダイオードです。調べても出てくるようなこんな回路を思いつきます。

簡単な選択回路

これであれば電圧が高い方が必ず出力されるようになります。しかし、この回路は一般整流用ダイオードを使用するために、電圧降下が大きいです。

例えばACアダプター等、常に電力を供給できる機器を使う場合は無問題ですが、バッテリー等上限があるものだと、電圧降下による損失は大きいです。

私の場合に当てはめるともう一つ痛いことがあり、負荷として3.3V駆動のマイコンを使うため、5VのUSB電源電圧を3.3Vに変換する必要があります。このとき、よく見る5V→3.3Vのレギュレータ「AMS1117-3.3」だと入力電圧に4.4Vは最低でも必要なので、電圧降下を考慮すると入力電圧としてはかなりギリギリになってしまうことです。

そもそもこんな損失の大きいレギュレータを使うなという話なのですが、そこは最終的なコストの兼ね合いでできれば使えたら良いなというのがあります。

電圧降下を減らすためにはいわゆる理想ダイオードを使えば解決できますが、これには別の問題があり理想ダイオードは基本的に高価です。物にもよりますが、安価なものでも1チップ千円前後するのでコスト的な問題でこの案は使えません。理想ダイオードを回路で設計すると、多少は安価にできますが、部品点数は多くなり実装の手間が増えるのがいただけません。

コストのことを考えつつ電圧降下を抑えるとなると、ショットキーバリアダイオードを使うとかですが、それでも150~300mV程度は落ちます。レギュレータの入力電圧としては問題ないですが、バッテリーからの電力供給と考えると損失はかなり大きいです。

あとは理想ダイオードに近い考え方ですが、オペアンプを使って比較したりもできそうなのですが、そもそもオペアンプを使う時点で部品コスト、サイズ的にやめておこうとなりました。

私の思いつかない回路をネットの方々は思いついていたりするので調べてみます。

ネットで探した回路の検討

調べてみても同じ回路を思いつく人がいるものです。ダイオードを並べて同じ欠点に気づくんですね。その人は理想ダイオードを使って解決したようですが、私はコスト的都合で却下です。

それ以外にも、シンプルにこういう動作を想定したチップを使うとかもあるみたいですが、比較的大型の部品で基板に実装するのはちょっと…というような感じになりそうなのでこれも却下。

Arduinoの回路での切り替え動作という、良さそうな記事を発見

http://radiopench.blog96.fc2.com/blog-entry-962.html?sp

実際の回路を見てみるとオペアンプを使ったり、FETを使ったり、IC使ったりと気軽に使えそうなものがないのでこれもダメそうです。

もう少し検索欄を下にスクロールすると、いい記事を発見しました。

http://denshikousakusenka.blog.fc2.com/blog-entry-170.html

こちらの回路はみるからにいい感じですね。というかやりたいことも同じですね。部品点数も少な目で、MOSFETの特性でコストや部品を決めれそうなのがいい感じです。

USB側電源側はショットキーバリアダイオードを使っているところも割り切りってあって素敵です。

というわけでこの回路を使ってみようと思います。

実際の回路と使用した部品

実際に作製する回路図はこんな感じです。

実際に作製した回路

使用した部品はこのようになっています。今後のことも考えてJLCPCBで実装しやすい部品を選んでみました。

素子名称
P-ch MOSFETAO3401A
一般整流用ダイオード1N4148W
ショットキーバリアダイオードB5819SL
抵抗10kΩ
負荷LED
使った部品

この回路をユニバーサル基板に適当に組み上げます。表面実装部品を強引にユニバーサル基板上に実装しています。

ユニバーサル基板裏側
ユニバーサル基板表側

これを使って実際に使えるかを検証してみます。

測定方法とその機器

電子工作ガチ勢なわけではないので、手持ちのアナログテスターを使います。SANWAのKIT-8Dです。

KIT-8D

アナログのテスターですので計測値は参考程度にお願いします。

使う電源は、最初からリチウムイオンバッテリーを使うと危ないので、とりあえずレギュレータの3.3Vの出力とUSB電源の5Vの二つを入力してみます。これらは電源を引き出せる自作キーボード基板を使用して確認します。

こんな感じで確認する

結果

はじめに、各入力電圧のラインのみに電圧を印加したときの出力電圧の結果を示します。前の章で述べたように私が使っているのはアナログの電圧計なので、多少の誤差を含みます。

入力電圧[V]出力電圧[V]電圧降下[V]
3.3Vラインのみ接続3.553.55ほぼ0
5Vラインのみ接続5.184.930.25
各ラインにのみ電圧を印加した場合の結果

次に両方の電圧を接続した場合の入出力電圧の測定結果を示します。

入力電圧出力電圧
3.3Vライン3.55V4.93V
5Vライン5.18V4.93V

このように、正しくスイッチングできていることが確認できます。

電圧は定常的には問題なく出力できることがわかるので、実際にLEDがどのように変化するかを確認します。両方つなげた状態で、5V入力を切ったりしてみます。

まず、5Vを入力しない状態がこの状態です。

3.3VでのLEDの明るさ

次にこの状態で5Vの入力を繋いでみます。

5VでのLEDの明るさ

5Vを繋ぐと明るく光ります。また、何度もON/OFFしてみてもすぐに明るくなったり暗くなるので、高い応答性があることは間違いないようです。ON/OFFの瞬間に、一瞬だけ明るく成ったり暗くなることはありませんでした。

細かくオシロ等で確認すると電圧降下が発生している可能性もありますが、LEDの応答速度では大きな変化は見られませんでした。

まとめ

USB電源とバッテリーのスムーズな切り替え回路を検討し、実際に作製して確認しました。その結果高い応答速度を持ち、正しく切り替えられることがわかりました。また、電位差のある入力でも電流逆流しないことがわかりました。USB電源/バッテリーの切り替え回路は今後はこれをベースに設計していってみようと思います。

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